計算折り紙入門：あたらしい計算幾何学の世界

かつて大学のオートマトンの講義でその先生が「計算折り紙（Computational Origami）」に関する話題をしていたので、CGといった分野はあまり得意ではなかったもののこの分野が気にはなっていました。私は上原先生が翻訳なさった「折り紙のすうり」を最近読みまして、リンケージ・多角形・多面体はたとえばコンピューター分野の赤黒木などに比べて遥かに古くから知られているにも関わらず、こんなにも未解決な問題が多いのか！と感心しました。さて、その上原先生が計算折り紙の本を出すというのを知りましたので、さっそく読みレビューを書こうとまずは全体をながめてみました。この本では、まず多面体の展開や多角形の敷き詰めといった問題を解説しながら、次に折り紙の「折り計算量」について細かく解説しています。そして、巻末にはいくつかの発展問題が載せられていて、中でもコンピューターと対比しながら折り紙の「折り判定問題」について述べている部分が大変興味深く思いました。たしかにここまでの議論ができるならば、もはや折り紙は1つの計算モデルだと言ってよいと感じました。★を4つとした理由としまして、この本は今までに読んだ本と比べれば多少の幾何と情報科学の知識を要求される印象があります。特に幾何の分野ではよく知らているであろう用語については、一部説明がなく文脈で判断したり別の文献で調べたりせざるを得ないものがありました。もろもろの事情があってのこととは思いますが、本の自己完結性という点で1つ★を落しました。